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 私は今、二人目の子供を妊娠していて、臨月の真只中にいる。予定日まであと17日だ。

 そもそも"Do you remember me?"Tourを企画したときから、この旅の記録を書くことは考えていた、というより、それをしないとこの旅は完結しない。と、思っていたにもかかわらず、どうしてその旅から3年余り経った今、しかもこ時期に、お腹の赤ちゃんには罪悪感を感じつつも、一人目の子供を寝かしつけた深夜にこれを書き出したのかというと、それは、"Do you remember me?"Tourを生むきっかけとなった1977年夏のC.I.S.V.の国際キャンプが今にして思えばいわゆる第一の人生を決定づけた旅になったように、この"Do you remember me?"Tourが所謂第二の人生を決めた旅になったからだ。

 その事は、「予期しなかった」という気持が80パーセント。どこか「予期していた」という気持が20パーセント。のような気もするし、その逆の割合のような気もする。
 とにかくその旅の延長線上に、それ以前には「今年中には決める!」とは決意しつつも、全く予定のなかった結婚、妊娠をし、そもそも"Do you remember me?"Tourを「その時期」にする理由となった仕事をしていく上での活動拠点が竣工し、出産し、その2カ月目には会社の設立し、本当にぼちぼちではあるけれども、全く一からのさまざまな活動が始まり、もうひとつの活動基盤を夫の祖国にも求めることになり、理想的に二人目を妊娠し、そのもう一つの活動基盤確立のために5カ月に渡り夫と別居生活をすることになり・・・、という全てのことが怒涛のようにやってきたのだ。 

 今まで何度も(特に妊娠中)「今こそあの旅の記録を。」と、思いつつ書けなかったのだが、この、夫と別居中で(彼は私が一人深夜など不規則な時間にこういうことをするのをあまり好まない。)、二人目を生む以前の5か月間こそ、ここ数年では最後のチャンス!と、予測し、これを書くことをこの間の一つの目標にしていたのだが、これまで、出産後に着手を予定している仕事のための自分にとっては全く新しい分野の資格獲得のための勉強を優先させてしていたこともあり、夫があと8日で帰ってくる!という今になってようやく着手することができた。
 そもそも資格試験に関して言えば、予定日が10月の6日で、試験日が10月の8日なので、バクチ的な要素が大きいのであるが、これについては先日朝日新聞で、『地球交響曲』の龍村仁監督が「1万数千個の完熟トマトがスケジュールが変更のためその時には撮影できなくなったので、心を込めて、待っていてくれるよう頼んだら、6日後に帰ってきたときまで木に実ったままの状態で待っていてくれて、無事撮影が終了したら、その日のうちに五千個ほどがボロボロっと落ちた。」というようなことを言っておられたのを読んで以来、「もしその資格が私達家族の将来にとって本当に意味のあるものであれば、(トマトどころか)人間の赤ちゃんなのだからきっと待っていてくれるはず。」と信じているので、10月1日からの一週間はまた試験勉強に専念するつもりだし、パートナーが帰ってきてから試験までは、お土産話その他でそれどころではないだろう。となれば、これを書くために私に与えられた時間は1週間だ。

 そもそも一緒に住んでいる母には呆れられつつも、10日で書き上げるつもりをしていたので、まあ、そんなに変わりはない。とにかく私と同じ丙午のおばあちゃんがよく言っていた「為せば成る。為さねば成らぬ何事も。成らぬは人のせざる也けり。」を励みに頑張ってみようと思う。
                                
1995年9月19日四方有紀