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Romanian Rhapsody

はじめに

"Do you remember me? Tour"で、ルーマニアに滞在中に結婚の話が盛り上がった私とマリウスだったが、私の結婚には自分で設けた3つの条件があった。

それらは3つとも、私が既に父を亡くした一人っ子だということに起因するもので、一つは、家と土地を継いでいるため、日本から離れられないということ。もう一つは、母との同居を承知してくれること。そして、あと一つは、名字を変えたくないということだった。

その三つは、相手が誰であれ、譲れないものだったが、相手がマリウスの場合は、今は気持が盛り上がっていて、「それでもいい。」と、言ってくれていても、言葉も習慣も異なるまだ見ぬ日本にほんとうに来る決心がつくのかどうかをまず見極めないといけない。その為には、まず、短期間でも日本に来てみてもらうということが必要な手順だった。

だから、寝物語で結婚の条件を承諾してくれた時も、「気持は嬉しいけど、とにかく、来てみて、現実を見てからでいいから。仮にそれで気持ちが翻っても、そのことは責めないから。」と、言っていたのだった。

10日間で結婚を決めた。しかも外国人と、というと、熱病に浮かされたまま雪崩込んだものと思われがちのようだが、その辺は冷静だった。

だから、その旅での別れの地となる空港に行く車の中で、日本での再会を誓っているのを聞いていた、彼のお姉さんが、どことなく、「どうせ行けっこないんだから、ヘンな期待をさせないでやってくれる?」的な表情だったのを見て、「それも無理はないけど、私はそんな無責任な奴ではない。彼が誠実なのが判っているから、絶対に約束は守る。」と、決意したのだった。

ルーマニアを発ってからのツアーでは、もちろん全部の滞在地から葉書を出した。そして、日本に帰国。これで、旅が終わったと思うのも束の間。それからは、日本に短期の観光に来るのにもビザがいるルーマニア人の彼がビザが取れるように、新たな手続きが始まった。

周りに今までルーマニア人を日本に招待した人など誰もいない。東京の外務省に電話してみることから、始めることにした。